聖書の歴史CX-8 聖書の歴史 目次 |
プロテスタントの宗教改革を先導した原則の一つは、聖書が唯一かつ絶対的な権威であることでした。 初期のプロテスタントたちが絶対的な信頼を置いた新約聖書本文は、Textus Receptus(Received Text=受け入れられた本文)でした。 それは、1516年にエラスムスの編集のもとで、初めて印刷されました。 この初期のプロテスタントの人々の確信は、見当外れだったのでしょうか? この疑問に対して三つの答え(見解)が存在し、以下のように要約することができます。 |
【1】TRについての自然主義的、批判的見解 自然主義的立場の聖書本文批評学者たちは、もちろん、『プロテスタントの宗教改革者たちがTextus Receptus(TR)に信頼するのは、大きな間違いである』と、長年にわたり、ためらうことなく主張してきました。 そういう学者たちによれば、TRは、
彼は1713年に著した『弁証論』でその方針を展開し、それ以来、自然主義の聖書本文批評学者たちはそれを用いて、保守的クリスチャンたちに対して自分たちの見解を売り込んできました。(注1) ベントレーは、こう主張しました。
そして彼は、こう結論付けました。
いくつかの神学校では、この方針を今でも教えています。 |
【2】TRについての高教会派の見解 [高教会派: カトリックの伝統を強調する英国国教会内のグループ] これは、ジョン.W.バーゴン監督、聖職者F.H.A.スクリブナー、および聖職者エドワード・ミラーらの見解でした。
彼らは、三つの教会団体だけを真のキリスト教会と認めていました。 すなわち、ギリシャ・カトリック教会、ローマ・カトリック教会、そして英国国教会です。 彼ら自身は英国国教会の中で職務に就いていました。 彼らは、こう主張しました。
バーゴンが、教会教父たち(彼らのほとんどは司教たちでした)の新約聖書の引用を非常に強調したのは、バーゴンの『高教会主義』のためでした。 彼にとって、そういう引用は決定的なものだったのです。 なぜなら、「大多数のギリシャ語写本に見出される伝統的新約聖書本文は、そもそもの初めから、初代教会の司教たちによって、あるいは、少なくとも大多数のそういう司教たちによって、権威が与えられてきた」と彼らが証明したからです。 しかし、この高教会主義は、バーゴンが『印刷されたギリシャ語新約聖書本文』を扱うようになった時、彼を裏切ることとなりました。 というのも、宗教改革の時代からバーゴンの時代に至るまで、『印刷された新約聖書本文』として英国国教会の司教たちから支持されてきたのは、TRだったからです。 しかも、このTRは、司教たちによって用意されたものではなく、一人の独立した学者であるエラスムスによって用意されたものでした。
それゆえ、これらの理由から、バーゴンとスクリブナーはTRに疑いの目を向け、それが大多数のギリシャ語新約聖書写本の中に見出される伝統的本文と合致する場合以外は、その擁護をしませんでした。 しかし、この立場は非論理的です。 もし私たちが新約聖書本文の摂理的保持を信じているなら、私たちは、大多数のギリシャ語新約聖書写本の中に見出される『伝統的本文を擁護』するのと同じく、『TRをも擁護』しなければなりません。 なぜなら、TRこそ、この伝統的本文が印刷されて流通してきた唯一の形態であるからです。 TRの擁護を拒むことは、こう印象づけることと同じです。
それは、こう仮定することと同じです。
ですから私たちは、バーゴンを、彼の正統派信仰のゆえに、また彼の『伝統的新約聖書本文の擁護』のことでは大いに称賛しますが、彼の高教会の教えを強調することや、彼がTRを軽視することに関しては、彼に従うことはできないのです。 |
【3】正統派プロテスタントの見解: 神の摂理により導かれてきた聖書本文 したがって、Textus Receptus(TR)の擁護は、プロテスタント理念の擁護の欠くことのできない一部なのです。 それは、信仰の論理により、必然的に次のような基本ステップが伴うものです。
(●論理的に導かれる結論 ●一貫性のあるクリスチャンの『新約聖書本文批評の5原則』 参照) |
■エラスムスらを導いた共通の信仰 TRの編集者であるエラスムス、ステファヌス、ベザ、およびエルゼビルらは、三つの仕方で摂理的に導かれました。
…………………………………………… (注1)Works, edited by A. Dyce, London: 1838, vol. 3, pp. 347-361. |
《出典 : The King James Version Defended 第八章 エドワード・F・ヒルズ著》
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●歴史CX 《神の摂理とTR》
1 聖書に対する二つの手法 2 現代主義の始まり…聖書の奇跡の否定 3 自然主義的本文批評を広めた人々 4 神の啓示が出発点です!! 5 『聖書を信じる学び』の3原則 6 一貫性のあるクリスチャンの『手法』 7 古代聖書と神の摂理 8 TRについての三つの見解 9 新約聖書本文の保持と『共通の信仰』 10 神に用いられたエラスムス 11 TRと伝統的本文の相違箇所 12 神の摂理を心に留めない批判者たち 13 神の摂理の継続・神が確証されたTR |
聖書の歴史V 偽造写本から"ねつ造"された |
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