聖書の歴史CX-11 聖書の歴史 目次 

《神の摂理TR

11 TR伝統的本文相違箇所

エドワード・F・ヒルズ博士

エドワード・ヒルズ博士
エドワード・F・ヒルズ博士
 古代および中世は『手書き写本の時代』でしたが、神は新約聖書の本文を無事に通過させてくださいました。
 この本文を現代の印刷されたページへと変換させるべき時に至っても、神は、仕損じることはありませんでした。
 それこそが、大多数のギリシャ語新約聖書写本の中に見出される伝統的新約聖書本文と、印刷されたTRとの関係を考察する際に、信じて聖書を学ぶ者を導いている確信です。
 この二つの本文は実質的には同一です。
 キルソップ・レイクおよび彼の同僚らは、伝統的本文(彼らはビザンティン型本文と呼びました)を徹底的に調査した中で、この事実を明らかにしました(1928年)。
 彼らは照合した結果、次の結論に至りました。

マルコ11章の中で、『10世紀から14世紀の写本の中で最も好評を博した本文注1)は、TRとの相違がわずか4ヶ所だけである。

 この相違の少ない数は、この同じ章の中でシナイ写本やバチカン写本や大文字写本DTR相違するのがそれぞれ69ヶ所、71ヶ所、95ヶ所であることからすれば、ほとんど無視できるように見えます。
 さらに、この同じ章の中で、バチカン写本シナイ写本とは34ヶ所で、大文字写本Dとは102ヶ所相違しており、また、シナイ写本大文字写本とは100ヶ所相違しています。

TR伝統的本文との相違箇所

 TRの中に、大多数のギリシャ語新約聖書写本の中に見出される伝統的本文相違している少数の箇所が存在します。
 それらの中で最も重要な相違は、エラスムスが、自らが育ったラテン語圏教会の用法によって影響を受け、時折、伝統的ギリシャ語本文よりむしろラテン語ウルガタ聖書にならったことによるものです。
 エラスムスがそうしてTRの中に導入した数々の読み方は、必然的に間違ったものだったのでしょうか?
 決してそのように推測すべきではありません。
 なぜなら、手書き写本の長い期間に新約聖書本文を代々保持してこられた神の摂理が、ついにこの本文が印刷機にゆだねられることとなった時、大失敗をするとは考えられないからです。
 したがって私たちは、信仰のアナロジー(類推)により、こう結論付けるのです。

  • TRは、新約聖書本文の神の摂理的保持におけるさらなる一ステップであった。
  • そして、TRの中に組み込まれたこれら少数のラテン語ウルガタ聖書の読み方が、ラテン語圏教会の用法の中で保持されてきた真の読み方であった。

 エラスムスは、それらの読み方を、印刷された彼のギリシャ語新約聖書本文(TR)の中に含めるべく、『共通の信仰』によって摂理的に導かれた、と私たちは理解することができるのです。
 TRにおいて神は、大多数のギリシャ語写本の伝統的新約聖書本文の中にまだ残っていたそれら少数の間違いを修正されたのです。


TRの中にあるラテン語ウルガタ聖書の数々の読み方

 次に挙げるのは、ラテン語ウルガタ聖書比較的少数の読み方の内、きわめてよく知られた重要ないくつかの読み方です。
 これらは、伝統的ギリシャ語本文にはないものですが、神の特別な摂理の導きによってTRの中に置かれたと思われるものであり、それゆえ保持されるべきものです。
 読者は、これらラテン語ウルガタ聖書の読み方が、それ以外の古代の数々の証言(すなわち、古代ギリシャ語写本、古代版の聖書、および教父たちの証言)の中にも見出されるとわかるはずです。
  • マタイ10・8「死人たちを、よみがえらせなさい
    …これは大多数のギリシャ語写本にはありません。
    けれども、この読み方はラテン語ウルガタ聖書および他のいくつかの写本、およびTRにあります。
  • マタイ27・35「これは、預言者により、『彼らは私の着物を自分たちで分け、私の服のことで、くじを引いた』と語られたことが成就されるためであった
    …これはエウセビウス(325年頃)の著作の中にあり、数々の『カイザリア』写本、古ラテン語版聖書、ラテン語ウルガタ聖書、およびTRにあります。
    大多数のギリシャ語写本にはありません。
  • ヨハネ3・25「それで、ヨハネの弟子たちとユダヤ人たちとの間で、清めのことで論争が生じた
    …数々の『カイザリア』写本、古ラテン語版聖書ラテン語ウルガタ聖書、およびTR等の読み方は、「ユダヤ人たち」であり、いくつかの写本および大多数のギリシャ語写本の読み方は、「一人のユダヤ人」です。
  • 使徒8・37「ピリポは言った。『もしあなたが全き心から信じているなら、よいのです』
     彼は答えて言った。『私はイエス・キリストが神の御子であられると信じています』

    …J・A・アレクサンダー(1857年)が述べたように、この節は、真のみことはでありながら、「バプテスマを遅らせる行為(三世紀末より以前は通常のことであった)に、なじまないものとして」、多くの書記者たちによって省かれていました。注2
    したがって、この節は大多数のギリシャ語写本にはありません。
    ただし、6世紀あるいは7世紀の写本を含めて、いくつかの写本にあります。
    これは、アイレナイオス(180年)、キュプリアヌス(250年)らによって引用されており、古ラテン語版聖書およびラテン語ウルガタ聖書にも見出されます。
    エラスムスは彼の注釈の中で、この読み方を写本『4ap』の欄外から取り、それをTRに入れたと述べています。
  • 使徒9・5「とげに向かって蹴るのは、あなたにとって、きびしいことです
    …この読み方は、ギリシャ語写本にはありませんが、数々の古ラテン語写本の中にも、また、エラスムスに知られていたラテン語ウルガタ聖書にもあります。
    また数々の写本およびラテン語ウルガタ聖書の写本にもあります。
    ただし、使徒26・14では、この読み方はすべてのギリシャ語写本にあります。
    エラスムスは彼の注釈で、この読み方を使徒26・14から取り、ここに挿入したことを述べています。
  • 使徒9・6「彼はおののきながら、また、驚きながら言った。  『主よ、私がどうすることを願っておられるのですか?』
     すると主は彼に向かって言われた

    …この読み方はラテン語ウルガタ聖書の中にも、それ以外の古代の数々の証言にも見出されます。
    ただし、これはギリシャ語写本にはありません。
    エラスムスは彼の注釈で、この読み方は、彼により、ラテン語ウルガタ聖書からギリシャ語に翻訳されたものであることを示しています。
  • 使徒20・28「神の教会
    …大多数のギリシャ語写本では、この箇所の読み方は、「主なる神の教会」です。
    ただし、ラテン語ウルガタ聖書およびTRの読み方は、「神の教会」であり、他の古代の数々の証言の読み方でもあります。
  • ローマ16・25〜27
    …大多数の写本では、この頌栄は14章の終わりに置かれています。
    ラテン語ウルガタ聖書およびTRでは、それは16章の終わりに置かれており、これは他の数々の写本で占めている位置でもあります。
  • 黙示22・19「そして、もし、だれかがこの預言の書のことばから取り除くなら、神は命の書から、…その人の分を取り除かれます
    …ホスキアー氏によると、ほとんどすべてのギリシャ語写本の読み方は、「命の木」です。
    TRの読み方は「命の書」であり、ラテン語ウルガタ聖書(非常に古いウルガタ写本を含む)、ボハイラ版(エジプト・コプト語)聖書、アンプロシウス(397年)、プリマシウスの注解(6世紀)、ハイモ(9世紀))の読み方も同じです。
    これは、エラスムスがラテン語からギリシャ語に翻訳したと言われている節のうちの一つです。

……………………………………………
注1)Harvard Theological Review (Harvard University Press ), vol. 21 (1928), p. 340.
注2)The Acts Of The Apostles, by J. A. Alexander, New York: Scribner, 1967, vol. 1, pp. 349-50.

《出典 : The King James Version Defended 第八章 エドワード・F・ヒルズ著》


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さらに深い理解のために(英語)
The King James Version Defended 第八章 2fエドワード・F・ヒルズ博士著
The history of naturalistic textual criticism(自然主義の聖書本文批評学の歴史)
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